strength for life

『strength for life』

(3:0:0)又は(2:0:1)

 

40~45分台本

 

~登場人物~
[クレイジー]

・性別男 ・ブルースよりも歳上・愛称『レイジ』・強い。でも弱い・父親を尊敬している ・ブルースは兄弟のような存在  

[ブルース]

・性別男。19歳 ・愛称『ブルー』・弱い。でも強い  ・クレイジーを尊敬している・クレイジーの父親には恩を感じている ・デスキラー

[博士]

・クレイジーの父親 ・デスキラーの研究をしている  ・博士としての父

[父]

・クレイジーの父親  ・ブルースを息子のように思っている・父としての博士

 


~3人(2:0:1)配役~

・クレイジー ♂or♀

・ブルース ♂

・博士+父 ♂

 


⚠️注意

・ 当サイト『さきょうのあたま』の利用が初めての方は、必ず利用規約をお読みくださいませ。

・クレイジーはあくまでも男です。女性の方が演じる際は性転換させないでください。(声の問題ではなく気持ちの問題です。男を演じるという気持ちがあれば誰でも演じて頂いて構いません)

・最後に、読み込みの際は『あとがき』までお読み頂けると作品に対する作者の意図が掴んでいただけると思うのでオススメです。

 


⚠️作品内での用語

【デスキラー】成長期の間に稀に起こる遺伝子の突然変異から、人喰いと化す子供。

【ライナー】デスキラー対策組織。子供の身体検査、デスキラー監禁を役割とする。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

~強さって、何だろう By,作者~

 


『strength for life』

 


【本編】

 


ブルース「っ…ははっ…これで…終わり、か…」

 


ブルース「……なあ…レイジ…」

 


クレイジー「っ…!」

 


ブルース「俺は……強くいられたかな………」

 

 

 

(間)

 

 

 

クレイジーN「ブルーが最後に残した問に、俺は応えてやれなかった。

ブルース…お前は最期まで戦った。お前は十分強かったさ…」

 


クレイジーN「…なぁ、ブルー。俺は…強くいられただろうか…」

 

 

 

(間)

 

 

 

ブルース「なぁ、レイジ」

 


クレイジー「ん?どうしたよ相棒」

 


ブルース「ちょっと聞いてくれるか?」

 


クレイジー「なんだよ、改まって」

 


ブルース「俺な…見つかっちまった」

 


クレイジー「見つかった?何がだよ」

 


ブルース「デスキラー」

 


クレイジー「っ!?」

 


ブルース「あー、やっぱり。その様子だとまだ聞いてないんだな」

 


クレイジー「…親父は何も」

 


ブルース「ははっ、なんでなんだろな。来月で誕生日迎えて…晴れて20歳!それで終わりだと思ってたのにな…」

 


クレイジー「そんな……っ…くそ!」

 


ブルース「おい!どこ行くんだよ」

 


クレイジー「親父んとこ!」

 


【クレイジー:走り去る】

 


ブルース「……ったく、まだ話の途中だっての」

 


ブルースN「2081年ーー15歳の少年が両親を食らうという事件が起きた。

暴れ回る少年は手に負えず、そのまま撃ち殺され、解剖に回された。

その時検出された真っ黒な血は、とても人間のものとは言い難いものだったという。

原因は、遺伝子の突然変異。このニュースはたちまちに広まり、世間では『人喰い事件』と呼ばれるようになった。

そして、その事件を皮切りに、似たような事件が相次いぐようになった。

ある時は18歳の少年が。ある時は11歳の少女が。ある時は13歳と15歳の兄弟が同時に…。

人喰いと化した子供達は、皆撃ち殺された。残酷だが、それ以外に止める方法がなかったのだ」

 

 

 

(間)

 

 

 

クレイジー「おい、親父!」

 


父「なんだ、騒々しい」

 


クレイジー「(父のセリフに被せて)ブルーがデスキラーだって!…本当なのか」

 


博士「あぁ、本当だ」

 


クレイジー「っ!……なんで…言ってくれなかったんだよ」

 


博士「(クレイジーのセリフに被せて)煩いぞ」

 


クレイジー「っ!」

 


博士「見つかったものは仕方ない。処分しなければ。お前も喰われるぞ」

 


クレイジー「なっ!?…親父…何言ってるか分かってんのか?ブルーだぞ!?親父も可愛がってた…あのブルーなんだぞ!?」

 


博士「クレイジー!口を慎め。今は博士と呼べ」

 


クレイジー「っ……」

 


博士「誰だろうと関係ない。例え、ブルースであろうと。これまでのデスキラー達と同様だ」

 


クレイジー「……あぁ、そうかよ。あぁそうかよ!……もういい」

 


【クレイジー:走り去る】

 


父「……」

 


クレイジーN「2082年ーーある学者が、人喰いと化する遺伝子変異の原因を突き止めた。

成長期に入った身体が、稀にその変化に耐えられず、じわじわと細胞そのものを変形させてしまうのだという。

彼はその対象に『デスキラー』と名付けた。…俺の親父だ。

これ以上犠牲を増やさぬようにと、国は対策組織を設立した。名を『ライナー』。俺も所属している1人だ。

ライナーの役割は2つ。1つは、10歳以上20歳未満の子供達の日々の検査。もう1つは、デスキラーと見なされた子供達の監禁。俺が配属されているのは後者だ。

デスキラーが正気を保てるのはたった5日間。その間、1日に極わずかな毒を投与され、衰弱死するまで手錠で繋ぎ、監禁される。

そんなデスキラー達を毎日観察し、壁越しに話をするのが俺のつとめであり、日課だったーーーでも…」

 

 

 

(間)

 

 

 

~次の日~

博士「クレイジー!ブルースの管理及び観察はお前に任命する」

 


クレイジー「なっ…!?」

 

 

 

(間)

 

 

 

クレイジーM「まさか、相棒の死を預かることになるなんてな…」

 


クレイジー「親父!」

 


博士「(クレイジーのセリフに被せて)博士だ」

 


クレイジー「……博士、しかし俺には!」

 


博士「今までと何も変わらない。出来るな」

 


クレイジー「……俺には……出来ません」

 


博士「例え仲のいい者であれ家族であれ、デスキラーは処分しなければならない存在だ。そして、これはお前の仕事だ。分かるな?」

 


クレイジー「…分かりません」

 


博士「……頑固な。おい、ブルースを呼べ」

 

 

 

(間)

 

 

 

ブルース「よぉ、レイジ。ったく、昨日はいきなり帰りやがってよ。」

 


クレイジー「………」

 


ブルース「今日から監禁入りなんだよ。担当がお前だってのも博士から聞いた。今日からよろしくな!相棒」

 


クレイジー「おまっ…そんな呑気に…いいのかよ。ほんとにそれで…」

 


ブルース「ははっ…ま、仕方ねぇじゃん?お前がいてくれるって分かっただけ安心したぜ?」

 


クレイジー「っ……」

 


博士「話はもういいか」

 

 

 

(間)

 

 

 

博士「ブルースの管理は、今後クレイジーに任せることとする。異論はないな?」

 


クレイジー「………はい」

 


博士「ブルース。お前の部屋に案内しよう」

 

 

 

(間)

 

 

 

博士「ここが、お前の部屋だ。クレイジー、ブルースに手錠を」

 


クレイジー「っ……」

 


博士「早くしろ」

 


クレイジー「……ごめんな」

 


ブルース「なーにしょぼくれた顔してんだよ!ほら、手伝ってやろうか?」

 

 

【ブルース:自分の右手首に手錠をかける】

 


クレイジー「っ!」

 


ブルース「なぁ、レイジ。約束しようぜ?俺が死ぬまで弱音吐かないってよ。強くいようぜ?俺の最後の頼み。な?」

 


クレイジー「……」

 


クレイジーN「断れる訳がなかった。ブルーとは兄弟みたいなもんで、なんでも分かちあってきた仲だから」

 


ブルース「俺はとっくに覚悟できてっからさ!」

 


クレイジーN「そんな奴の頼みに、頷かないわけがない…」

 


ブルース「な?」

 


クレイジー「…あぁ、分かった。やってやろうじゃねぇか!その代わり、弱音吐いてみろ?死ぬまでおちょくってやるからな!」

 


ブルース「はーん。言ったな?そのまま返してやるよ!」

 


クレイジー「ふんっ、その挑発乗った!」

 

 

【クレイジー:ブルースの左手に手錠をかける】

 


ブルースM「もう、戻れない…」

 


クレイジーM「もう…戻れない」

 

 

 

(間)

 

 

 

博士「ブルース。ここにお前の命有り。苦難なる時も幸福なる時も、お前は1人の人であった。今、この神聖なる場にて、その命国に捧げること許したまえ」

 


クレイジーM「『命の儀式』俺はこの場を何度見てきただろうか…。

大半の子供達は泣き喚き、打ち拉がれていた。なのにこいつはーーーどうしてこんなにも笑っていられるんだ」

 


博士/父「ーー『サイゴ』まで生き抜いてくれ」

 

 

 

(間)

 

 

 

~1日目~

 


クレイジー「よぉブルー。元気にしてっかー?」

 


ブルース「なんだよレイジ。遅いじゃねぇかよ」

 


クレイジー「悪ぃ悪ぃ」

 


ブルース「あーあ、俺が1人寂しくこんなとこ閉じこめられてるってのにさー」

 


クレイジー「んなこと言うなよ。俺には他にも管理任されてる奴らがいんの!」

 


ブルース「っ…ははっ。そんなムキになんなって冗談だろ?」

 


クレイジー「この状況でやめろよな」

 


ブルース「はいはい。悪かった悪かった」

 


クレイジー「…思ってねぇだろ」

 


ブルース「で?その他の奴らってのは?」

 


クレイジー「へ?」

 


ブルース「お前の仕事の話って聞いた事ないだろ?」

 


クレイジー「あー、確かにな」

 


ブルース「ライナーがどんな組織かは知ってるし、お前の仕事がどんなに重いものかってのも想像つく。だから聞かなかったんだけどよ」

 


クレイジー「……」

 


ブルース「今は、理由は違えどこうやって同じ場所にいる訳だし。だから、聞いてもいいか?」

 


クレイジー「っ…はは。そんな気遣いお前らしくねぇよ!あぁ、聞け聞け!」

 


ブルース「なんだよそれ。…んー、そうだな。…どんな奴がいるんだ?」

 


クレイジー「どんな奴…ね。…まぁ、全員を全員知ってるわけじゃないけどさ。」

 


ブルース「おう」

 


クレイジー「今ここにいるデスキラーは合計7人。あ、お前も入れてな。」

 


ブルース「7人…。思ってたより少ないのな」

 


クレイジー「そんなことないぜ?5人超えれば多い方」

 


ブルース「ふーん、そんなもんか」

 


クレイジー「まぁ、デスキラーが目に見える程にいっぱいいても困るだろ?」

 


ブルース「まぁな」

 


クレイジー「で、その中で俺が管理してるのはお前含めて3人」

 


ブルース「7人中3人?!ほー、信頼されてんのな」

 


クレイジー「まぁ、軽く押し付けられてるようなもんだけどな。やっぱこういう仕事だからさ。ノイローゼ起こして仕事できなくなる奴がほとんどな訳。

で、その余りがこっちに来る訳よ」

 


ブルース「ふーん、大変なのな。まぁでも、信頼されてなきゃ頼まれねぇだろ?」

 


クレイジー「まぁなっ。これでもライナーのトップは、あの超有名な学者であり俺の親父だぜ?信頼されてんに決まってんだろ」

 


ブルース「っ……(吹き出す)」

 


クレイジー「んだよ」

 


ブルース「ははっ…お前ってほんと、親父馬鹿な奴…っ」

 


クレイジー「はぁ?んな事ねぇようるせぇな」

 


ブルース「はいはい。で?どんな奴がいるって?」

 


クレイジー「ったく、話逸らしたのはそっちだろうが…。」

 


クレイジー「1人はブロッサムって10歳の女だ。愛称は『サム』。俺が付けてやった。」

 


ブルース「10歳…」

 


クレイジー「あぁ。今いる中で最年少。2日前に入ってきた奴でな。ちょいと生意気だがよく喋る奴だよ」

 


クレイジー「んで、もう1人はルーザーって16歳の男。愛称は『ルー』。自分の名前が嫌いだからそう呼んでくれとさ。」

 


ブルース「ルーザーはいつからここに?」

 


クレイジー「ルーは明日で5日目。」

 


ブルース「……」

 


クレイジー「毒がまわって体はほとんど動かねぇみたいだけど、元気だぜ?

紙をくれって言うから渡してやったらさ、ずっと絵ばっか描いてやがるよ」

 


ブルース「…紙?」

 


クレイジー「あぁ、言い忘れてた。お前も何か欲しい物あったら言えよ。

手錠は外してやれないから不便だろうけど、何か使いたい物とかあれば…」

 


ブルース「(クレイジーのセリフに被せて)紙…」

 


クレイジー「え?」

 


ブルース「紙!俺も紙が欲しい。あぁ、あと書くものと」

 


クレイジー「あー、えーっと?紙と…書くものはなんでもいいのか?(メモしながら)」

 


ブルース「あぁ」

 


クレイジー「了解…っと。じゃあ明日の朝投函しとくよう頼んどくから」

 


ブルース「おう。よろしくな」

 


クレイジー「あいよ。っと、もうこんな時間か」

 


ブルース「帰るのか?」

 


クレイジー「あぁ。悪いな。また明日も来るからよ」

 


ブルース「分かってるって」

 


クレイジー「じゃあな。相棒」

 


ブルース「またな。相棒」

 

 

 

(間)

 

 

 

ブルースM「あと…4日」

 

 

 

(間)

 

 

 

~2日目~

クレイジー「よぉ。相棒」

 


ブルース「っ…!!」

 


クレイジー「ん?今なんか隠したろ」

 


ブルース「別になんでもねぇよ」

 


クレイジー「ふーん?」

 


ブルース「紙届いたからよ。試しに書いてみてただけだ」

 


クレイジー「…そうかよ。で?書いてみた感想は?」

 


ブルース「手錠が邪魔で書きづれぇ」

 


クレイジー「ははっ。だろうな。」

 


ブルース「ルーザーはどんな風に書いてんだ?」

 


クレイジー「……」

 


ブルース「レイジ?」

 


クレイジー「ルーは…死んだよ」

 


ブルース「っ……そういえば…。悪かった」

 


クレイジー「いや、ブルーが謝ることなんてないぜ?この仕事してたら、死なんて常につきものなんだからよ」

 


ブルース「……」

 


クレイジー「ルーは最後笑ってたぜ。幸せそうだったよ。あ、そうだ。これ…(ポケットを探りながら)」

 


クレイジー「ルーが最後まで握りしめてた。俺宛ての絵らしいぜ」

 


ブルース「…花?」

 


クレイジー「多分、向日葵だと思うぜ」

 


ブルース「…向日葵…」

 


クレイジー「ルーは、捨て子だったんだ。真夏の炎天下、橋の下に捨てられてたんだとよ。それを今のあいつの母親が見つけたらしいんだがな。籠の中には、赤子と一緒に『ルーザー』って記された紙と向日葵の花が入っていたらしい」

 


ブルース「……」

 


クレイジー「だから自分の名前を極度に嫌ってたんだろうな」

 


ブルース「でも、どうして向日葵の花なんて?」

 


クレイジー「これは後から分かった話なんだが、ルーの実の母親はルーを産んですぐにデスキラーだと発覚したんだそうだ」

 


ブルース「っ!?デスキラー…ということは…」

 


クレイジー「あぁ。ルーの実の母親は当時17歳。デスキラーになりうる対象だった。

おそらく、自分の子供を守りたかったんだろうな。デスキラーの子供だと知れば、世間は冷たい目で見る。それを避けたかったんだろう」

 


ブルース「その事…ルーザーには?」

 


クレイジー「もちろん知らされた。ルーが10歳の時」

 


ブルース「……」

 


クレイジー「俺はその時、まだルーの存在を知らなかったからよく分かんねぇけどさ。

多分、ルーにとって向日葵は母親の形見だったんだろうよ」

 


ブルース「…形見…か。…綺麗だな」

 


クレイジー「だろ?一丁前にメッセージまで添えやがってさ」

 


ブルース「…?あ、い、が、と、つ?」

 


クレイジー「(ブルースのセリフに被せ気味に)ありがとう…だってよ」

 


ブルース「ありがとう……」

 


クレイジー「こっちこそ、ありがとうだってのによ」

 


ブルース「…いい奴だったんだな」

 


クレイジー「あぁ」

 


ブルース「俺も会ってみたかったなぁ」

 


クレイジー「いつか会えるさ」

 


ブルース「……そうだな」

 


クレイジー「はーあ、なんかしんみりしちまったな」

 


ブルース「たまにはいいじゃねぇか」

 


クレイジー「ふっ、まぁな」

 

 

 

(間)

 

 

 

クレイジー「じゃあ、そろそろ帰るわ」

 


ブルース「おう。また明日な」

 


クレイジー「おうよ。相棒」

 


ブルース「………」

 


クレイジー「あー!そうそう」

 


ブルース「?」

 


クレイジー「ルーは足使って書いてたぞ!足を使え!」

 


ブルース「……ふっ、あいよ」

 


クレイジー「じゃあ、またな」

 


【クレイジー:去って行く】

 


ブルース「……」

 

 

 

(間)

 

 

 

ブルースM「あと……3日」

 

 

 

(間)

 

 

 

~3日目~

クレイジー「よぉ相棒。起きてっかー?」

 


ブルース「…ん?なんだよ、今日は早いのな」

 


クレイジー「お、起きてた」

 


ブルース「今日は早く来れたのか?」

 


クレイジー「ん?あぁ。管理が一時的にお前だけになったからな」

 


ブルース「…そうか」

 


クレイジー「まぁ、明日また新しい奴が来るから今日だけになっちまうけど」

 


ブルース「別にいいよ。そんなの」

 


クレイジー「あぁん?寂しいんだろ?」

 


ブルース「はぁ?んなこたねぇよ」

 


クレイジー「本当かぁ?」

 


ブルース「当たりめぇだばーか。本当だったとしても誰が言うかよ。弱音吐かねぇって言ったろ?」

 


クレイジー「チッ…覚えてたか」

 


ブルース「テメェの言葉忘れる奴がいるかよ」

 


クレイジー「はっ、からかってやろうと思ったのによ」

 


ブルース「ふっ、死んでもそんなことさせねぇよ」

 


クレイジー「で?また何か書いてたのか?」

 


ブルース「ん?あぁ。見せねぇぞ?」

 


クレイジー「知ってらぁ。まぁ、どっちみち後で見ることになるけどな?」

 


ブルース「その時はその時さ」

 


クレイジー「いいのか?」

 


ブルース「あぁ。楽しみにしてやがれ」

 


クレイジー「……なぁ」

 


ブルース「ん?」

 


クレイジー「体調、どうだ?」

 


ブルース「ん?問題ねぇよ」

 


クレイジー「問題ねぇことねぇだろ」

 


ブルース「んー、確かに吐き気とか手足の痺れは酷くなってきちまったけど…」

 


クレイジー「(ブルースのセリフに被せて)」それのどこが問題ねぇってんだ?」

 


ブルース「ん?生きてりゃあ問題ないだろうよ」

 


クレイジー「……はぁ。お前なぁ」

 


ブルース「どうせ死ぬ運命なんだから、死ぬことに怯えてるより、少しでも生きようとする方が楽しいだろ?」

 


ブルース「ここに来てからさ、目が覚める度に思うぜ。あぁ、生きてる…って」

 


クレイジー「……」

 


ブルース「身体が言う事聞かなくなってきても、痛くても、きつくても、苦しくても…死が近付いてくる恐怖よりも、またレイジに会えるって喜びの方が大きいんだぜ」

 


クレイジー「…」

 


ブルース「だって、ここにいれば毎日お前に会えるだろ?俺さ、それがすっげえ嬉しい」

 


クレイジー「…っはは。嬉しい事言ってくれんじゃん」

 


ブルース「だから、問題なんて何にもねぇよ」

 


クレイジー「……そうか」

 


ブルース「あーあ、なんか小っ恥ずかしいこと言っちまったな」

 


クレイジー「なんだよ、いいじゃねぇかよ。撤回すんなよ?」

 


ブルース「はっ、しねぇよ。全部本心だ」

 


クレイジー「…ありがとうな」

 


ブルース「んだよくすぐってぇな。礼なんていらねぇよ」

 


クレイジー「ふっ、素直じゃねぇ奴」

 


クレイジー「……なぁ、ブルー」

 


ブルース「ん?」

 


クレイジー「明日も生きろよ」

 


ブルース「っ…。ははっ、ったりめえよ」

 

 

 

(間)

 

 

 

ブルースM「…実際、体はボロボロ。思考回路も意識してないと今にも途切れそうだ。でも、レイジには見せたくねぇ。あいつだって、頑張ってんだ」

 


ブルースM「『強くいようぜ』…なんて、『サイゴ』の『サイゴ』にとんだわがまま言っちまったよな。あいつの弱さは相棒の俺が1番分かってるってのによ。でも…それでも、弱音なんて吐きたくなかった。じゃなきゃ……俺は…」

 

 

 

(間)

 

 

 

ブルースM「あ、と…2日」

 

 

 

(間)

 

 

 

~4日目~

ブルースM「………来ない」

 


ブルースM「……落ち着かない。

大丈夫。これは不安なんかじゃない。これは恐怖なんかじゃない。これは……」

 


父「ブルー」

 


ブルース「っ…!…あ」

 


父「調子はどうだ」

 


ブルース「調子…あ、えっと、」

 


父「無理はしなくていい」

 


ブルース「え…」

 


父「もう、喋るのもきついんだろう」

 


ブルース「……」

 


父「無理して考えるな。無理して喋らなくていい」

 


ブルース「……」

 


父「今日はレイジは来ないかもしれない」

 


ブルース「…そう…か…」

 


父「何があったって訳ではないんだがな」

 


ブルース「…分かって、る」

 


父「…そうか」

 


父「お前もレイジも馬鹿なくらいに強がりだからな。そのくせに泣き虫で。

お互いに心配をかけることは何も言わないが、私から見れば何を考えているかよく分かる。2人共、とてもよく頑張っているな。」

 


ブルース「……」

 


父「私はライナーの管理者として、平等に命を裁かねばならない。だからずっと、自らの気持ちを抑えてきた」

 


ブルース「……わか、って…る」

 


父「だが、今日は博士としてじゃない。1人の人として。クレイジーの父親として。…お前に話をしに来た。聞いてくれるか?」

 


ブルース「……あ、ぁ…」

 


父「…ブルー。お前は本当に強い奴だな」

 


ブルース「……」

 


父「小さな頃からそうだ。歳上のレイジよりもずっとしっかりしていて、強くて。

レイジよりも気に入っている部分があった。

父親の私がこんなことを言うべきではないんだろうけどな」

 


ブルース「っ…そんな、こと言ったら…レイジ、が…妬くぞ…」

 


父「ははっ、いいんだよ。今くらい。レイジには秘密だからな」

 


ブルース「死んでも…言わねぇ…よ…」

 


父「正直悔しいよ。どうしてブルーなんだってな。でも、そんなことを言っても仕方が無いからな。私は『サイゴ』まで私の仕事をさせてもらう」

 


ブルース「……そう…し、てくれ」

 


父「ブルー」

 


ブルース「?」

 


父「レイジと仲良くしてやってくれて…感謝している。あいつは良い奴だが、難あるところも多々あるからな。喧嘩を買ってくることもしょっちゅうだっただろう」

 


ブルース「……」

 


父「そんな中、ここまで親身になってくれるのは、ブルー。お前だけだったよ。

レイジはお前に出会って救われたよ。それは、私も同じだ」

 


父「ーー『サイゴ』にこれだけは伝えたかった。お前は、私にとって息子も同然の宝だ」

 


ブルース「……あ、りがっーーーー」

 


ブルースN「ーー俺の意識はそこで途切れた」

 

 

 

(間)

 

 

 

クレイジー「い…おい……」

 


ブルースM「…なんだ…騒がしい…」

 


クレイジー「ブルー…、なぁ…おい…」

 


ブルースM「……レイジ…。来て、くれたのか?」

 


クレイジー「聞こえてんのか…なぁ……おい!」

 


ブルースM「聞こえてるっての…うるせぇな…」

 


クレイジー「おいブルー!しっかりしやがれ!」

 


ブルース「っ…!!」

 


ブルース「……レイ、ジ…」

 


クレイジー「ったく、やーっと起きやがったか。遅いぞ」

 


ブルース「…っ…遅いの、は…お前だろ」

 


クレイジー「ははっ、悪ぃ悪ぃ。ちと調子が優れなくてな」

 


ブルース「どーせ…っ、食いすぎて…腹でも壊したん、だろ」

 


クレイジー「んー、まぁ、そんなところ?」

 


ブルース「ったく…相変わらずだ、な…っゲホゲホ」

 


クレイジー「っ!」

 


ブルース「なぁ、レイ、ジ…」

 


クレイジー「ん?」

 


ブルース「今……何日、だ…?」

 


クレイジー「お前はんなこと気にしなくて…」

 


ブルース「今……何日、だ」

 


クレイジー「……5日。もうじき明日になる」

 

 

 

(間)

 

 

 

~5日目~

ブルース「…やっぱり…そうか」

 


クレイジー「……」

 


ブルース「わ、かる…ぜ?どんどん…意識が遠のいてく……死が…近いんだ、…って…」

 


クレイジー「…昨日、意識を失ってから今までずっと眠っていたそうだ。

……悪かったな。お前がそんななのに、俺…」

 


ブルース「謝んな、…って。それ以上言ったら、お前、弱音…止まんね…だ、ろ…」

 


クレイジー「ははっ…そうかもな」

 


ブルース「強くいよぉぜ……。俺は、お前の…そういう…とこーーー」

 


クレイジー「ブルー?っ…おい!」

 


ブルースM「……おいブルース…。まだ…逝くんじゃねぇよ…」

 


クレイジー「ブルー?おい!なぁ!返事しろよ!!!」

 


ブルースM「まだ……レイジに…伝えてなーーーー」

 


【心肺停止の音】

 

 

 

(間)

 

 

 

クレイジー「なっ……。そんな…ブルー!なぁ!」

 


クレイジー「っ…親父っ……博士を呼ばないと」

 


【クレイジー:走り去る】

 


クレイジー「はぁ…はぁ…っ、博士!」

 


博士「なんだ騒がしい」

 


クレイジー「(博士のセリフに被せて)ブルーがっ!」

 


博士/父「…死んだ、か…」

 


クレイジー「……はい」

 


博士/父「……そうか」

 

 

 

(間)

 

 

 

博士「直ぐに処分しろ」

 


クレイジー「っ………はい」

 


【クレイジー:立ち去ろうとする】

 


博士「………クレイジー!」

 


クレイジー「………」

 


博士/父「…よく…頑張った」

 


クレイジー「……ありがとう……ございます」

 


【クレイジー:立ち去る】

 

 

 

(間)

 

 

 

~6日目~

【クレイジー:ブルースの部屋の鍵を開ける】

 


クレイジー「………ブルー…」

 


クレイジー「…お前は……よく頑張ったよ…ほんと」

 


クレイジー「…なぁ、ブルー。お前は俺の人生で最初で『サイゴ』の相棒だ。…忘れねぇよーーーー」

 


クレイジー「…っ、くそ…。なんで…なんで、なんで!なぁ!目ぇ覚ましやがれよ!なぁ!」

 


ブルース「っ…ゲホゲホ」

 


クレイジー「っ…!?」

 


ブルース「っ…レ、イジ」

 


クレイジー「なんで…生きて……」

 


クレイジーM「ブルーが…生きてる…?生きてる…生きて……!」

 


クレイジー「っ…?!ぁ…くそっ…肩…」

 


ブルース「……食い…たい……」

 


クレイジーM「ブルースのその目はもう……人ではなかった。その目を見た途端俺の中で糸が切れた。痛い…痛い…イタい……。

傷口なんてどうでもいいほどに…苦しい…認めたくねぇ…」

 


クレイジー「あ゛ぁぁぁぁぁっ!」

 


クレイジー「なんで…なんで…。なぁ、ブルー…なんでお前なんだよ…。もう…これ以上お前を苦しめたくねぇよ。苦しみたくねぇよ!……お前を殺すようなこと……したくねぇよ…」

 


ブルース「…食わ、せろ…」

 


クレイジー「あぁ。食えよ。…俺を食えよ。もう…限界だ」

 


ブルース「ぁ、ぁ…うわぁぁぁっ!」

 


クレイジー「っ…!」

 

 

 

(間)

 

 

 

クレイジー「…?」

 


ブルース「……やめ…ろ……」

 


クレイジー「……ブルー?」

 


ブルース「勝手なこと…言ってんじゃ、ねぇ…」

 


クレイジー「なっ、お前!」

 


ブルース「俺、だって!……お前のこと…傷つけた、く…ねぇん…だよぉ…」

 


クレイジー「っ…」

 


ブルース「こん、な……血ぃ、流させ、て…。ほん、と…情けねぇ、よ…」

 


クレイジー「そんなことっ!」

 


ブルース「な、ぁ…レイジ」

 


クレイジー「っなんだ?」

 


ブルース「もう…俺は…俺じゃ、ねぇ。お前んこと……食っちまう…。だから、さ……殺し、て…くれよ…」

 


クレイジー「な、お前何言って…そんなこと!……出来るわけねぇだろ」

 


ブルース「いい…から…!……殺れ、よ…」

 


クレイジー「嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ!やめてくれよ!」

 


【発砲音】

 


ブルース「ぐっ……ぁっ…」

 


クレイジー「なっ…博士…何して…」

 


博士「処分しろと言ったはずだ」

 


クレイジー「でも!ブルーはまだ死んでっ…」

 


博士「そいつはもうブルースではない。デスキラーだ」

 


クレイジー「でも!」

 


博士「それ以上口を挟むな!…『サイゴ』の時間を設けてやる。終わったら呼びに来い」

 


【博士:立ち去る】

 


ブルース「っ……た、く…いってぇ…」

 


クレイジー「っ!ごめんな…」

 


ブルース「んで…お前が、謝ん、だよ…」

 


クレイジー「俺…俺…」

 


ブルース「……もう、何も…言うな、よ…。時間、ねぇんだから、よ…」

 


クレイジー「っ……」

 


ブルース「弱音…吐いた、から…お前の、負け…だな…」

 


クレイジー「あぁ、もうそれでいいからっ…」

 


ブルース「(クレイジーのセリフに被せて)ったく……ははっ…これで…終わり、か…」

 


ブルース「……なあ…レイジ…」

 


クレイジー「っ…!」

 


ブルース「俺は……強くいられたか、な………」

 


クレイジー「そんなのっ…」

 


ブルース「なぁ、レイジ…(クレイジーのセリフに被せて)」

 


ブルース「お、れ……」

 


クレイジー「っ…ブルー?ブルー?なぁ………ブルース!!」

 

 

 

(間)

 

 

 

クレイジー「……終わり…ました」

 


博士「ご苦労だった」

 


クレイジー「……親父、俺…」

 


博士「まだだ」

 


クレイジー「え…」

 


博士「まだ、終わっていない。ブルースの部屋を片付けにいくぞ」

 


クレイジー「………はい」

 

 

 

(間)

 

 

 

クレイジーM「あの後、ブルーの遺体は研究にまわされた。俺は放心状態で、さよならさえも言えなかった…。」

 


クレイジー「…博士、片付け終わりました」

 


父「………」

 


クレイジー「…博士?」

 


父「……ブルース…」

 


クレイジー「っ…その紙は…」

 


父「ブルースの…ものだ」

 


クレイジー「っ…見せてください」

 


父/博士「…お前は、見ない方がいい」

 


クレイジー「なっ……どうして…」

 


父/博士「…いいから」

 


クレイジー「俺には!……見る権利があります」

 


父「…どうしても、見たいのか」

 


クレイジー「……はい」

 


父「……分かった。だが、何があっても自分を失うなよ」

 


クレイジー「……分かりました」

 


【父:紙を渡す】

 


父「……」

 


クレイジー「っ……!」

 


クレイジーN「そこには、目を覆いたくなるほどの残酷な言葉が羅列されていた」

 


ブルースM「苦しい……痛い……出たい……。レイジに会いたい……。なんで俺が……。もっと生きてたかった……。死にたくない……」

 


クレイジーN「これが……ブルーの本音…」

 

 

 

(間)

 


父「大丈夫か?」

 


クレイジー「……あぁ」

 


父「なぁ、レイジ」

 


クレイジー「なんだ、親父」

 


父「ブルーは……私を憎んでいるだろうか」

 


クレイジー「っ……」

 


父「私のことを、恨んでいるだろうか…」

 


クレイジー「……そんなことねぇよ。あいつは、親父にすっげぇ感謝してた」

 


父「…そうか」

 


クレイジー「…なぁ、親父」

 


父「なんだ、レイジ」

 


クレイジー「俺も…あいつに憎まれてねぇかな…」

 


父「大丈夫だ。あいつは、最後までお前に感謝していただろう」

 


クレイジー「……」

 


父/博士「お前は、本当によく頑張ってくれている。今回だって」

 


クレイジー「………」

 


父「よく、頑張ったな」

 


クレイジー「っ……」

 


父「今は泣けるだけ泣いておけ」

 


クレイジー「っ……ぁ……」

 


父「………」

 


クレイジー「…なぁ、親父」

 


父「なんだ?」

 


クレイジー「……親父も…よく頑張ってるな」

 


父「っ……!?」

 


クレイジー「…俺、親父のこと…すっげぇ尊敬してっから」

 


父「……あぁ。ありがとう」

 


クレイジー「俺は……どこまでも、ついて行くからな…」

 


父「………あぁ」

 


クレイジーN「涙でぼやけちまってたけどーーー初めて、親父の涙を見た気がしたーー」

 

 

 

(間)

 

 

 

クレイジーN「なぁ、ブルー。俺は…強くいられただろうか」

 


クレイジーM「ブルーがいなくなってから、3ヶ月がたった。デスキラーは収まることなく、相変わらず俺は死と隣合わせの毎日を送っている。

人が死ぬってのは、やっぱりどんなに経験しても慣れないもんだ。それでも仕事だから、やらなきゃいけねぇしやめる気もねぇ。

親父が進む道に俺も続こうと、俺自身が決めたから。

なぁブルー。強くなるってなんだろな。今になってもやっぱ分かんねぇよ。あの時だって結局弱音吐いちまったしな。

でも…。ただ1つ俺が言えることは、

ブルー。お前は十分強かったぜ」

 


博士「クレイジー。新しく管理を任せたい奴がいる。いいか」

 


クレイジー「はい、博士」

 

 

 

【END】

 


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~あとがき~

(少し長くなりますが最後までお付き合い下さいませ)

 


どうも。作者の鎖狂です。

今回はかなり重ためなお話になりました。

しかし、こんなにも重たい内容にも関わらず、実はこの物語を書くきっかけは、ただ『クレイジー』という名前のキャラクターを登場させたかっただけなんです(笑)

いやー、作者もまさかここまで重たい話になるとは当初は思っても見ませんでした。

 


今回の作品のテーマは『責任感』です。

クレイジーの相棒を守りたいという気持ちに反する、仕事を全うしなければならないという責任感。

ブルースの死にたくないという気持ちに反する、クレイジーを守りたいという責任感。

人間、自分の気持ちよりも優先しなければならないこと、やりたくなくてもやらなくてはいけないことってありますよね。

博士と父の表記を別々にしたのもそのため故です。

父の父親としての責任感。博士としての責任感。そんなシビアな部分を表現したく、あえて別々にしてみました。

なので、あまり出てこないにも関わらずクレイジーの父親は最も重要で難しいキャラクターになるでしょう。

 


登場人物達は一体どんな気持ちだったのでしょうか?きっと複雑な気持ちだったと思います。

しかし、苦しくても自分の成すべきことを全うした登場人物達はそれぞれに強かったのではないかと作者は思います。

 


また、作者の遊び心で作品の所々に散りばめられた『サイゴ』の表記にも注目していただきたいです。

果たして登場人物達にとってそれは何に対する『最後』なのでしょうか、はたまた何に対する『最期』なのでしょうか。

同じ言葉でも違う意味になる。

そうやって見ると、捉え方もまた変わりますよね。

 


皆さんは、この物語に何を思うのでしょうか?

深く考えることの出来る作品になっていればいいなと作者は願っております。

 


それでは、次回作でお会いしましょう。