虹色の蒼空~廻る万華鏡~

『虹色の蒼空~廻る万華鏡~』

(1:1:0)

10~15分台本

 

~登場人物~

[男]

・女からは30代くらいに見えている(あくまで見えているだけで実年齢は不明)

・元サラリーマン

・自殺未遂者

・一人称『俺』

[女]

・男からは子供に見えている(実際は成人している(らしい)が、実年齢は不明)

・有名な金持ち一家の1人

・一人称『私』

 


注意⚠

・ 当サイト『さきょうのあたま』の利用が初めての方は、必ず利用規約をお読みくださいませ。

・年齢、場所、時間、関係性などなど、設定は一切ございません。全てはあなた達が考える物語です。

・笑い声やため息や涙などのリアクションは一切書いていませんので、自己責任でつけてください。

・最後に、読み込みの際は『あとがき』までお読み頂けると作品に対する作者の意図が掴んでいただけると思うのでオススメです。

 

 

 

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~この物語は、あなた達が作るものですBy,作者~

 


【本編】

 


虹色の蒼空

~廻る万華鏡~

 

 

 

[男M]

明日はきっと晴れる…。そんな期待をしていたが……結局は雨が降って、それどころか雷までなる始末で…ほら、元通り。

 


[女]

ほーら、また雨が降った。

 


[男]

はいはい、全く雨続きもいい加減にして欲しいな。

 


[女]

そう?

私は雨好きだけどなー。

 


[男]

こんなジメジメしてんのの何がいいんだか。

 


[女]

んー、おじさんと一緒にいられるから?

 


[男]

嘘だろ

 


[女]

うん、嘘

 


[男]

知ってた

 


[女]

うん、知ってる。

それよりおじさん、お腹空いた。

 


[男]

金ならないぞ。

 


[女]

もー、そういうところケチなんだからー。

なんでもっとお金ないわけ?

おじさん30歳くらいでしょ?

 


[男]

持ってねぇもんは持ってねぇつーの!

 


[女]

それにしてはよさげなブランド品つけてるじゃん…怪しーい。

 


[男]

煩いな

 


[女]

おじさん…何か隠してるでしょ?

 


[男]

っ別に…何も隠しちゃないよ。

 


[女]

へー、首吊り自殺しようとしてた人の言うセリフ?

何も無くて自殺するの?おじさん趣味悪いねー!

 


[男]

あーもう、煩いな!

リストラだよリストラ!

お前みたいなひよっこには分からないだろーよ!

 


[女]

私、普通に成人超えてるんだけど。

 


[男]

へー、何歳なんだよ

 


[女]

わー、おじさん女の人に年齢聞くなんてそれこそ趣味悪ーい!

 


[男]

なっ…大人をからかうんじゃあない!

 


[女]

だーかーら、私も大人だって。

 


[男]

…あー、もうなんでもいいよ。めんどくさい。

 


[女]

ま、今更深読みしたところでなんだけどねー。

お互い身分も明かさずに、ここに居るんだからさ。

 


[男]

ほんと、こんなうるさい奴がいて、息苦しいよ。

 


[女]

そんなこと言って、窒息死しないだけマシでしょ?

 


[男]

俺は死のうとしていたんだぞ?!窒息死の方がまだマシだね。

 


[女]

嘘だぁ。私が助けてあげた時、安心しきった顔してたくせに。

 


[男]

助けただ?邪魔をしたの間違いだろうに。

 


[女]

でもおじさん、ちゃっかり着いてきたじゃん。

 


[男]

そりゃ、お前が『着いてきたら最高の死を見せてあげる 』なんて言いやがったからな。

気になってついていけばなんだここ。

 


[女]

いい場所でしょ?

最期の場所にはもってこい。

 


[男]

そうか?狭いし…それになんだよあのゲーム。

 


[女]

了承したのはおじさんだよ?

『次の日が雨なら繰り返し。晴れならおじさんを殺す。そして曇りなら…一緒に死のう』って。

面白いでしょ?

実際雨続きで死ねずじまいだけどねー。

 


[男]

この梅雨じゃあ仕方ないけどよ…。

なぁ、俺はいつ死ねるんだ?

 


[女]

さぁ、天気に聞けば?

 


[男]

俺の死を決めるのはお天道様しかいないってか。

 


[男]

やれやれ、リストラなんかにあわなきゃなー

 


[女]

今頃何してた?

 


[男]

何してたんだろうなー。

いい家住んで、家族もいて、好きなことして…幸せだったろうに。

 


[女]

幸せ…欲しい?

 


[男]

あぁ、そりゃあ手に入るもんなら欲しいね。

 


[女]

じゃあ、そのブランド物の服やらアクセサリーやらなんなりと売っちゃえばいいのに。

 


[男]

なっ、これはダメだ!俺の宝物になんてこと言いやがる!

 


[女]

それさえ売れば少なくとも生活費は帰ってくるよ?死ななくて済むんじゃない?

 


[男]

これは俺のプライドだ。

仕事で重ねたプライド。そんなもん捨てられるかよ。

墓場まで持っていくんだ!分かったか!

 


[女]

まーったく、プライドなんて死んだら価値ないのに。

 


[男]

仕事をすればいずれわかるんだよ。

 


[女]

ふーん、そんなもの?私にはわかんないや。

 


[男]

分からなくていいんだよ。

別に分かってもらいたかねぇしよ。

 


[男]

そんで、お前はどうして死にたいんだよ?

 


[女]

へ?私死にたいなんて一言も言ってないよ?

 


[男]

でも、曇りならお前も死ぬって…。

 


[女]

あぁ、あんなの大した理由なんてないよ。

おじさんとなら死んでもいいかなって。

 


[男]

なんだよそれ

 


[女]

でも、3分の1の確率だからね。

私の命の行方もお天道様にしか分からない。

 


[男]

ま、こっちも深読みはしないけどよ。

 


[女]

………。

 


[女]

明日はどうなるかな?

 


[男]

また雨なんじゃないか?

 


[女]

それは…失望?それとも…願望?

 


[男]

煩いな

 


[女]

………。

 


[男]

まぁ、お前といるのも悪くは……ないかもな。

 


[女]

……ありがとう。

 


(次の日)

 


[女N]

別に何か理由があったわけじゃない。

家庭だってあったし、趣味を共有できる友達だっていたし、お金だってあった。

幸せすぎるくらいの生活で、満たされていた。

 

 

 

[男]

おはよう

 

 

 

[女N]

そんな日々だったけれど、ある日おじさんを見つけた。

毎朝窓から、D社に入っていく姿を見送り、夜には残業帰りの重たい背中を見送っていた。

そんなある日、おじさんがリストラにあったと風の噂で聞いた。

私が持っているもの全てを持たないおじさん。

それだけでなく、それ以外をも失ったおじさん。

ただ、興味本位だったんだ。

それでも、声をかけずにはいられなかった。

 

 

 

[女]

……おはよう。

 

 

 

[男N]

町外れの裕福な家。

そこらでとにかく有名なお金持ちの家だ。

俺はそのすぐ近所の会社に通っていた。

その道で、いつも窓から覗いている女がいた。

 

 

 

[女]

やっと……晴れちゃったね。

 

 

 

[男N]

最初は、『金持ちなんて! 』と毛嫌いしていたが、いつの間にか毎日窓の様子をちらっと伺うのが日課になっていた。

そんな日々の中で、俺はリストラにあった。

初めは頑張ろうとしたが、なんだか馬鹿らしくなってやめた。

もうこれしかないと自殺を決めたが、その瞬間ふとあの窓越しの女が声をかけてきた。

ただ、興味本位だったんだ。

それでも、着いていかずにはいられなかった。

 

 

 

[男]

あぁ…。

もう……死ねるんだな。

 


[女]

やっと…死ねるんだね。

 


[男]

全く、何日かかったんだか。

 


[女]

ほんと、何日かかったんだか。

 

 

 

[女N]

内心、曇りになって欲しいと願っていた。

おじさんと過ごす時間の中で、この人と最期を味わってみたいと思ったから。

でも、本音を言えば、雨が続けばよかったと…そう思う。

 

 

 

[女]

ほんと、これ以上雨が続かなくてよかったよ。

 


[男N]

内心、曇りにならなくてよかったと安堵していた。

煩いやつだが、女と過ごす時間の中で、この人は死なせたくないと思ったから。

でも、本音を言えば雨が続けばよかったと…そう思う。

 

 

 

[男]

本当に。

これ以上続くだなんてゴメンだからな。

 


[女]

最期に言い残すことは?

 


[男]

そんなもんねーよ。

まぁ……ありがとう…とでも言っておくか。

 


[女]

…おじさん、らしくなーい。

 


[男]

ばーか、『死なせてくれて 』ありがとうだよ。

 


[女]

おじさんの最期が私で嬉しいよ?

 


[男]

そんなこと思ってないだろ。

 


[女]

あ、バレた?

まぁでも、楽しかったよ。ありがとう。

 


[男]

あぁ、じゃあな。

 


[女]

おじさん!

 

 

 

[男N]

女の呼び声と共に強烈な痛みが走った。

あぁ…これで死ぬのか。呆気ないな。

走馬灯が走り抜ける中、最期に聞いたのは優しい声だった。

 

 

 

[女]

……また、会おうね。

 

 

 

【END】

 


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~あとがき~

 


どうも、作者の鎖狂です。

今回は、作者の記念すべき第1作目の作品です。

それでは、この物語を書き始めたいきさつを少しだけ語らせて頂きたいと思います。

台本には、ストーリーの流れがあり、そこにキャラクターがいて、細かい設定などがあり…。そういうものだと思います。

そこを全てとっぱらってしまえば、一体役者はどんなにふうに考え、感じ、演じるのだろう。

また、その物語はどのような色に染まるのだろう…と。

そのように考え作られたのが、この作品です。

制作調節段階では、設定が全くなく全て演者任せなことに「演者殺し!」とよく言われたものです(笑)

 


このゲームの意味は?2人は何を思っていたのか。男の死因は?些細な言葉の意味とは……。

他にも様々な疑問が過ぎるこの作品。

皆さんはどのように感じるのでしょうか。

 


今作、『虹色の蒼空~廻る万華鏡~』のタイトルに隠された想い。

是非ともこの作品を、虹のように様々な色に染め上げ、万華鏡をくるくるとまわす楽しみのように様々な表情を見せてください。

2人の物語をめぐらせてやってください。

 


それでは、次回作でお会いしましょう。