パンドラ
『パンドラ』
(1:1:0)
35~40分台本
〜登場人物〜
[アザミ]
・性別女。
・本名はサクラ。23歳。
・ネットでは大人っぽくしっかりした印象だが、実際は甘えたがりでわがまま。
・強気であたりが強い。
・幼い頃に両親を亡くしており、『家族』というものに対してこだわりが強い。
(作者から一言→アザミは結構几帳面なので、とにかく色んなことに対して真面目に真剣に葛藤してるんだと思います。)
[ケンジ]
・性別男。
・本名はケン。45歳。
・セクハラ紛いな言動が多々あるが、その実際は紳士的で面倒見が良い。
・自分に対しての自信はあまりなく、頼られることに自分の価値観を見出している。
(作者から一言→ケンジは人のことになると自分のことなんてゴミみたいにほっぽっちゃうので、意外と自傷的な一面を持っていると思います。)
⚠️注意
・当サイト『さきょうのあたま』の利用が初めての方は、必ず利用規約をお読みくださいませ。
・本作には一部性的描写があります。観覧、使用の際は自己責任でよろしくお願いします。
・登場人物の性転換はご遠慮ください。
・最後に、読み込みの際は『あとがき』までお読み頂けると作品に対する作者の意図が掴んでいただけると思うのでオススメです。
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~こういう幸せもあるよね By,作者~
『本編』
~アザミの部屋~
(アザミ:携帯の画面を見つめながら)
アザミ「…あーあ。またやっちゃった」
アザミM「いつから私はこうなったんだろう。んー...分かんない。
私って、ほんと最低な人間だよね。自分で言うなよって感じだけど。...でもさ?
ーーー最低な人間は幸せになっちゃいけませんか?」
(間)
~駅~
アザミ「えっと...?黒のジャケットに...サングラス...」
ケンジ「紺のスカートに...デニムジャケット...」
アザミ「あっ!(ケンジに駆け寄る)」
アザミ「やっほー!」
ケンジ「あ、やっと見つけた。えっと...アザミ...だよね?」
アザミ「うん、そっちはケンジ...だよね?」
ケンジ「おう」
アザミ「はー...よかったー...(しゃがみこむ)」
ケンジ「ん?どした?」
アザミ「あーいや、会うまでずっと緊張してたからさ」
ケンジ「そうなの?」
アザミ「そりゃ、オフ会なんて初めてだし?なんか危ないとか聞くし?緊張するでしょうよ!」
ケンジ「危ない?俺が?」
アザミ「ん?ケンジはいつも危ないでしょうよ」
ケンジ「はいはい、俺は危ないおじさんですよ」
アザミ「ふふっ」
ケンジ「ま、ここにいても何だし。行くか」
(間)
~街中~
ケンジ「んだよ、ジロジロ見て」
アザミ「んー?ほんとに写真のまんまだなーと思って」
ケンジ「そりゃ、本人だしね?」
アザミ「まぁ、そりゃそうだけどさ?......ふふっ」
ケンジ「ん?どした?なんかいいことでもあったか?」
アザミ「いや、なんかさ」
ケンジ「おう」
アザミ「やっと会えたなーって感じ」
ケンジ「ふっ、なんだよそれ」
アザミ「んー?別にー?」
ケンジ「そんな可愛いこと言うと、襲っちゃうぞ?」
アザミ「まーたそうやってすぐ誘うー」
ケンジ「ん?通常運転?」
アザミ「知ってますー」
ケンジ「ははっ、相変わらずの塩対応」
アザミ「んで?どこ連れてってくれるの?案内してくださいよー?おじさん?」
ケンジ「おじさん?」
アザミ「なーにキレてんの。さっき自分が言ったんじゃん」
ケンジ「自分で言うにはいいんだよ」
アザミ「えー、じゃあ何?お兄さんとでも呼べばいい?」
ケンジ「それはそれで......有り」
アザミ「うえ、気持ち悪」
ケンジ「失礼な」
アザミ「...あれ、ケンジって何歳だっけ?」
ケンジ「45」
アザミ「あれ、そんな若かったっけ?」
ケンジ「失礼だな」
アザミ「えっと?私が23だから...?22歳離れてるのか」
ケンジ「おじさんって差でもないだろ?」
アザミ「おじさんじゃん」
ケンジ「あのなぁ」
アザミ「んー、じゃあ本名で呼んだ方がいい?それとも、ケンジのままの方がいい?」
ケンジ「どっちでも」
アザミ「ふーん。じゃ、ケンジ」
ケンジ「なんで?」
アザミ「呼びやすいから」
ケンジ「即答かよ。そっちは?本名の方がいい?」
アザミ「どっちでもいいよ。呼びやすい方で」
ケンジ「じゃあアザミ」
アザミ「そっちだって即答じゃん」
ケンジ「今更呼び方変えてもな」
アザミ「それね。でも、なんでケンジ?本名ケンでしょ?」
ケンジ「ケンの次の名前」
アザミ「まんまじゃん」
ケンジ「俺のネーミングセンス舐めんじゃねぇよ。んなもんねぇから」
アザミ「知ってる」
ケンジ「そっちは?なんでアザミ?サクラと1文字も掠ってねぇじゃん」
アザミ「好きなキャラクターからとった」
ケンジ「そっちだってまんまじゃねぇかよ」
アザミ「いいじゃん。好きなんだもん」
ケンジ「何のキャラ?」
アザミ「え、知らないの?!」
ケンジ「は?」
アザミ「『あの日の君を僕は忘れない』」
ケンジ「あぁ、あの超マイナーアニメ。人気無さすぎてワンクールで終了した...」
アザミ「人気ないとか言わないの!」
ケンジ「ほんとの事だろ」
アザミ「ちーがーう!周りの目がなかっただけだってば!」
ケンジ「あれだろ?ヒロインが主人公に恋をするけど、結局横取りされてフラれる...」
アザミ「んー、ちょっとニュアンス違うけど...なんだ知ってるんじゃん」
ケンジ「まぁ、あれだけ2チャンで叩かれてればな」
アザミ「だーかーらー!」
ケンジ「で?そのアザミってのはどんなキャラなわけ?」
アザミ「え?んーとね、可愛くて優しくて、すっごく大人びてるんだけどめちゃくちゃ毒舌でね。主人公にはとにかく塩対応なの。でもなんだかんだで主人公のことが好きなんだよねー!なのに主人公はそれに気づいてなくて、あーもー!早く気づけよー!後輩が可哀想だろーがー!って感じ!」
ケンジ「...ふーん」
アザミ「...何さそんな意味深な顔して」
ケンジ「ん?わざとなのかなーって」
アザミ「何が?」
ケンジ「大人びてて、毒舌で、塩対応で...あとなんだ?後輩だっけ?」
アザミ「うん。それがどうしたの?」
ケンジ「いや、アザミじゃん」
アザミ「...ん?」
ケンジ「いや、だから。お前じゃんって」
アザミ「...は?!そんなわけないじゃん!」
ケンジ「でも、設定聞く限りじゃお前じゃね?」
アザミ「違うよ!アザミは私なんかよりも断然可愛くて可愛いくて可愛くて!可愛いんだから!えーっと?(携帯を取り出して)
ほら見て!可愛いでしょ!(画像をケンジに見せつけ)」
ケンジ「ん?...っはは(吹き出して)」
アザミ「どしたの?」
ケンジ「いや、見た目は全然違うなと思って」
アザミ「当たり前じゃん。アザミと私が似てるわけないでしょ!」
ケンジ「はいはい。そういうことにしておきましょうか」
アザミ「(不貞腐れて)」
ケンジ「ほら、着いたぞ」
アザミ「ん?えっ、は?!ここって...」
ケンジ「ラブホ街」
アザミ「なっ...は?!」
ケンジ「何驚いてんだよ」
アザミ「えっ、ちょ...ケ、ケンジ...あんた正気?!」
ケンジ「正気も何も、俺はいつでも本気だけど?」
アザミ「っ......」
(間)
ケンジ「...ふっ...はは(吹き出して)」
アザミ「なっ...えっ...」
ケンジ「何慌ててんだよ」
アザミ「慌てるに決まってんでしょ!」
ケンジ「ん?なんか話食い違ってるなーと思ったら、アザミこれからどこいくと思ってんの?」
アザミ「どこって...」
ケンジ「こっち」
アザミ「なっ...!」
ケンジ「アザミずっと行きたがってただろ?俺の行きつけのバー。そこちょっと曲がったとこなんだけど...あ、何?もしかしてホテルでも行くと思った?」
アザミ「なっ...」
ケンジ「っ...(笑いを堪え切れない様子で)」
アザミ「っ!もう!このエロおやじ!」
ケンジ「その通りですが何か?え、何?期待でもした?」
アザミ「してません」
ケンジ「(クスクスと笑って)」
アザミ「もー!!」
ケンジ「はいはい。よしよし」
アザミ「触るな!この変態!」
ケンジ「えー、おじさん寂しいなー。せっかくずっとアザミが行きたいって言ってたから連れてきてあげたのになー。そんな言い方されるなんてなー。ちょっとふざけただけなのになー」
アザミ「なっ...」
ケンジ「あーあ。残念だなー。帰ろっかなー」
アザミ「...い、行くもん!」
ケンジ「ふっ、単純」
(間)
~BAR内~
ケンジ「お席をどうぞお嬢様(椅子を引いて)」
アザミ「うるさい...」
ケンジ「何?まだ拗ねてんの?」
アザミ「...別に」
ケンジ「拗ねんなって。来たかったんだろ?」
アザミ「そりゃ、来たかったけど...」
ケンジ「(タバコを取り出し吸い始め)マスター。オリジナルのやつ2つ。あ、1つはアルコール弱めに作ってやって」
(間)
ケンジ「で?どした?」
アザミ「え?」
ケンジ「最近元気がなかった。いきなり会いたいとか言ってきた。タイムラインに訳ありそうな呟きが多かった」
アザミ「......」
ケンジ「彼氏となんかあったか?」
アザミ「...んー、やっぱケンジにはバレちゃうか」
ケンジ「そりゃ、お前分かりやすいし?」
アザミ「そんなことないもんっ。...はぁ、あーあ」
ケンジ「んだよ」
アザミ「いや、確かに彼氏関係で悩んでるのは確かだよ」
ケンジ「おう」
アザミ「で、会社の都合で引っ越す先が偶然ケンジの地元だった」
ケンジ「おう」
アザミ「で、ふと思ったわけですよ。ケンジに会いたいなーって」
ケンジ「それで?」
アザミ「このモヤモヤした気持ち吹っ飛ばせないかなーって」
ケンジ「やっぱりな」
アザミ「...なんで当てんのよ」
ケンジ「ん?アザミが分かりやすいから」
アザミ「2回も言うな」
ケンジ「んで?どしたって」
アザミ「んー、彼氏が直接どうこうってわけじゃないんだけどさ」
ケンジ「おう」
アザミ「彼氏がさ。綺麗すぎるのよ」
ケンジ「......は?潔癖性ってこと?」
アザミ「ピュアすぎるってこと」
ケンジ「...具体的には?」
アザミ「世でいう完璧彼氏っていうの?連絡マメだし、彼女第一だし、デートの時はいつも好きなところに連れてってくれるし。
家事も手伝ってくれるし、収入もしっかりしてるし、怒らないし、束縛しないし、紳士的だし...」
ケンジ「それだけ聞いてるとただの自慢かよって感じ」
アザミ「ほんとその通り。世間一般には自慢しても恥ずかしくないくらいには素晴らしい彼氏。......でもさ?」
ケンジ「おう」
アザミ「なんか、それが今になってプレッシャーっていうかさ」
ケンジ「プレッシャー?」
アザミ「うん。なんていうかさ、釣り合わないなって。私は、男友達とかいっぱいいるし、彼氏第一とか考えられないし。
付き合い始めた頃は周りから素敵なカップルとか言われて、浮かれてたんだけどさ。
...だんだんそのピュアさが疲れてきちゃってさ」
ケンジ「ピュア...ねぇ」
アザミ「私ってさ、汚いの。正直、浮気はバレなきゃしてもいいと思ってるし、セフレとかそういうのも全然有りだなって思う人間なの。
あ、思うだけでしたことはないけどね」
ケンジ「なんで?」
アザミ「んー、なんでかって聞かれると...。なんでだろ。したことないから分かんないや」
ケンジ「...んー、そっか。そういうパターンもあるのな」
アザミ「そういうパターンって?」
ケンジ「いや、俺がよく聞くのは、彼氏が構ってくれないだの、束縛が激しいだの。そういうのばっかりだったからさ。
そういう悩みもあんだなーって」
アザミ「贅沢な悩みだよねー」
ケンジ「自分で言うなよ」
2人「(笑う)」
(間)
(2人の前にカクテルが用意される)
ケンジ「お、きたきた。これ、お前飲みたかったんだろ?」
アザミ「あ、これ...。ケンジがよくタイムラインにあげてるカクテルだよね?」
ケンジ「そ。毎回あげる度にあざみが反応するから、こいつ絶対飲みたがってんだろなーって」
アザミ「...はぁ。ほんと、あんたって私の考えてることよく分かるよねー」
ケンジ「アザミが分かりやすいからな」
アザミ「どこら辺が?」
ケンジ「全体的に」
アザミ「曖昧だなー」
ケンジ「じゃあ、アザミの今考えてること当ててやろうか?」
アザミ「ほー。当ててみろよ」
ケンジ「俺に抱かれたい」
(間)
アザミ「んー、そうだなー。まぁ正解」
ケンジ「お、まじで?」
アザミ「まじで」
ケンジ「じゃあなんでさっき期待してないとか言ったの」
アザミ「期待してるとか言ったらそのままホテル直行するでしょ」
ケンジ「だめなの?」
アザミ「気が早い」
ケンジ「えー」
アザミ「私の話を最後まで聞いてからにしろ」
ケンジ「聞けばいいのかよ」
アザミ「まぁ。あんたに会うってことは?多分そうなんだろーなーとか?考えてたし?」
ケンジ「いっつもセクハラしてるエロおやじだもんな」
アザミ「うん」
ケンジ「色んな女口説くもんな」
アザミ「うん」
ケンジ「でも、そんなこと考えてるアザミもよっぽどエッチだと思うけどな」
アザミ「うるさい!あんたの言うことは本気か冗談か分からん!」
ケンジ「俺はいつだって本気だけど?」
アザミ「...はぁ。ていうかさ、ケンジあんた彼女は?」
ケンジ「ん?彼女?」
アザミ「よく女の子と遊びに行ってるでしょ?女の子の方が写真載せてるからたまに見かけるんだけど。あ、私は直接絡みなくてね。誰だっけ...えっと...」
ケンジ「あぁ、ハルカのこと?」
アザミ「そうそう、ハルカさん」
ケンジ「あいつは俺のセフレ」
アザミ「まじで?」
ケンジ「まじで」
アザミ「まじか」
ケンジ「まじよ」
アザミ「てっきり彼女だと思ってた」
ケンジ「まぁ、よく遊んでるからな」
アザミ「そっか、彼女いないんだ」
ケンジ「で?話って?」
アザミ「今日はね、ケンジに抱かれに来たの」
ケンジ「よし、ホテル行こう」
アザミ「だから聞けって」
ケンジ「抱きたい抱かれたいで話は終わっただろ」
アザミ「理由を聞け」
ケンジ「ったく、めんどくせぇな」
アザミ「抱かせねぇぞ?」
ケンジ「はいはい。で?なんで?」
アザミ「何か考え変わるかなーって」
ケンジ「考えって?」
アザミ「私ね、彼氏と別れるか考えてるの」
ケンジ「ほう」
アザミ「彼氏のことは好きだけどね。さっきも言ったけど、私って汚いのよ。彼氏がしてくれることに私は何も返せない。かといって返そうと努力する訳でもない。
結局自分が一番大事なのよ。でもさ、そんなもんでしょ?」
ケンジ「まぁ、そうかもな」
アザミ「でも、やっぱり罪悪感ってあるわけ。なんで私ってこうなんだろうって。
でも直せない。...なんでか分かる?」
ケンジ「さぁ」
アザミ「私は彼氏を愛していないから」
(間)
アザミ「さ、行こっか」
ケンジ「は?」
アザミ「ん?」
ケンジ「話は?」
アザミ「これで終わり」
ケンジ「意味わかんね」
アザミ「ん?行かないの?ホ・テ・ル」
ケンジ「...はぁ。はいはい。(タバコの火を消して)マスター、金ここに置いとくから」
(間)
~ホテル街~
アザミ「で?どこ入るの?」
ケンジ「どこがいい?」
アザミ「私、実のところラブホテルって場所に縁がないのよね」
ケンジ「さすがに嘘だろ」
アザミ「まじで」
ケンジ「まじか」
アザミ「今は同棲中だし、その前もお互い一人暮らしだったし。だから1回も行ったことない」
ケンジ「じゃああそこ行くか」
アザミ「なんで?」
ケンジ「よく行くから」
アザミ「セフレと?」
ケンジ「そ」
アザミ「えー」
ケンジ「えーってなんだよ」
アザミ「ホテルはじめてって言ってる女の子にそれはないわ」
ケンジ「は?」
アザミ「わー、ないわー」
ケンジ「あー、はいはいそうですね」
アザミ「拗ねるなよ」
ケンジ「拗ねてねぇし」
アザミ「ふっ、はいはい。ほら、入るんでしょ?(手を差し出して)」
ケンジ「.....ったく、もうなんでもいい(アザミの手を取って)」
(間)
~ホテルエントランス~
アザミ「(あたりをキョロキョロとして)」
ケンジ「そんなにキョロキョロしてっと、処女だと思われんぞー」
アザミ「うるさいな」
ケンジ「ほんとに来たことないんだな」
アザミ「あんたに嘘なんかついてどうするのよ」
ケンジ「ま、それもそうな」
(間)
~ホテル室内~
ケンジ「さ、お先にお入りください?」
アザミ「ありがと」
ケンジ「どう?」
アザミ「ん?」
ケンジ「初めて来たご感想は」
アザミ「んー、まぁ普通?ていうか、端から目的が決まってるのに感想も何もなくない?」
ケンジ「そこはもっと女の子らしい反応しようぜ?恥ずかしいとかねぇの?」
アザミ「それこそ、目的が明確なのに恥ずかしがる理由ってある?まだ裸を見られたわけでもあるまいし、ましてや私から誘ったのに」
ケンジ「やれやれ。まぁ、アザミらしい反応だけど」
アザミ「ん!(両手を広げて)」
ケンジ「...ん?」
アザミ「だっこ」
ケンジ「なんで」
アザミ「いいからだっこ!」
ケンジ「ふっ。はいはい」
ケンジ「いきなり甘えん坊か?」
アザミ「...別に、普通だし」
ケンジ「普通?」
アザミ「うん」
ケンジ「そっか」
アザミ「ねぇ」
ケンジ「ん?」
アザミ「キスして」
ケンジ「はいはい(キスして)」
アザミ「...ふふっ」
ケンジ「可愛いな」
アザミ「...可愛くないし」
ケンジ「アザミってさ、ネットの時とは全然違うのな」
アザミ「そう?」
ケンジ「ネット内のアザミは、年齢よりもずっと大人びてて、すっごいしっかりしてる感じ」
アザミ「よく言われる」
ケンジ「でも、今日こうして話してると、わがままで、甘えん坊で。こっちが素のアザミなの?」
アザミ「ガッカリした?」
ケンジ「する訳ないだろ?」
アザミ「ならよかった」
ケンジ「アザミ?」
アザミ「何?」
アザミ「...サクラって呼んでもい?」
アザミ「...いいよ」
ケンジ「今はネットのアザミじゃなくて素のサクラのままでいて(頬にキスをして)」
アザミ「ん...。いっぱい甘えるから、覚悟しといた方がいいよ?」
ケンジ「寧ろそうして。その方が興奮する」
アザミ「変態」
ケンジ「褒め言葉」
アザミ「ちょっ、どこ触ってっ...」
ケンジ「ん?俺に抱かれたかったのはどこの誰だったかなー」
アザミ「っ...」
ケンジ「あ、ここ好き?」
アザミ「...ばか」
ケンジ「ふっ、何だかんだ照れてんじゃん」
アザミ「うるさい」
ケンジ「強気なところはアザミと変わらずだな」
アザミ「知らない」
ケンジ「はいはい。そろそろその煩い口、塞ぎましょうかね」
アザミ「っ...ふ、ぅ...!」
ケンジ「んっ......(深いキスをして)」
アザミ「っ...ぷはっ...」
ケンジ「ふっ、やっぱ可愛い」
アザミ「可愛くないっ...」
ケンジ「素直じゃない」
アザミ「うるさい」
ケンジ「ほんとに抱いていいの?」
アザミ「いいからきたんでしょ」
ケンジ「最確認。後で文句言われんの嫌だし」
アザミ「......いいよ」
ケンジ「ほんとに俺でいいの?」
アザミ「...いいよ」
ケンジ「じゃあ、なんで俺なの?」
アザミ「......」
ケンジ「サクラ?」
アザミ「うるさい!早く抱きやがれ」
ケンジ「ふっ、はいはい。仰せのままに」
(間)
ケンジ「サクラ」
アザミ「......ん...」
ケンジ「おはよう」
アザミ「ん...眠い...」
ケンジ「ん?昨日は凄かったもんな?」
アザミ「...うるさい」
ケンジ「睨むなよ」
アザミ「腰痛い」
ケンジ「それはご愁傷さま」
アザミ「激しすぎ」
ケンジ「抱いてって言ったのは誰?」
アザミ「......」
ケンジ「で?考えは変わった?」
アザミ「んー...どうだろ」
ケンジ「どうだろって...」
アザミ「ケンジ、だっこ!」
ケンジ「はいはい」
アザミ「よいしょ...っと。ふぅ」
ケンジ「何してんの?」
アザミ「ケンジの匂い嗅いでるの」
ケンジ「加齢臭だぞ」
アザミ「そんな臭くないよ。...安心する」
ケンジ「(アザミの頭を撫でて)」
(間)
アザミ「ねぇ、ケンジ」
ケンジ「ん?」
アザミ「私さ、結婚するの」
ケンジ「...は?!」
アザミ「だーかーら、結婚」
ケンジ「まじ?」
アザミ「あとは私の返事一言で決まる」
ケンジ「なのに別れるか考えてんの?」
アザミ「うん」
ケンジ「なんでまた」
アザミ「...前にさ、私の両親2人ともいないって話したじゃん?」
ケンジ「そういえば。交通事故だっけ?」
アザミ「うん」
ケンジ「それがどうした?」
アザミ「昔から憧れてたの。素敵な家族に。私が大人になったら絶対に叶えてやるんだって思って、それだけが私の夢だったの。
だから私、そのためだけに頑張った。
勉強して、良いとこ就職して、お金も貯めて」
ケンジ「おう」
アザミ「でもさ、やっぱり結婚って肝心な相手がいないとできないじゃん?」
ケンジ「まぁ、そりゃそうだな」
アザミ「私の夢を叶えるためには、私だけが完璧じゃだめなの。相手も完璧じゃないとさ」
ケンジ「サクラの彼氏は完璧?」
アザミ「うん」
ケンジ「どこら辺が?」
アザミ「昨日も言ったけど、すごく綺麗なの。これぞいい人間のお手本なんだろうなって感じ」
ケンジ「ふーん」
アザミ「この人なら良い夫、良い父親になってくれるなって。そう思って付き合った」
ケンジ「良い彼氏じゃなくて?」
アザミ「うん」
ケンジ「なんで?」
アザミ「私って今まで結構いろんな人と付き合ってきたのよね。ニートだとかギャンブラーだとか借金持ちだとか、どこかしらでダメ男な人達」
ケンジ「うん」
アザミ「皆大好きだったし、愛してた。でもさ、結婚したいなとは思わなかったの」
ケンジ「完璧じゃないから?」
アザミ「そう。で、最終今の彼氏を選んだ。でもそしたらね、将来性は見えたんだけど今度は愛情がうまれなくて、その代わりに罪悪感がうまれたの」
ケンジ「昨日も言ってたな」
アザミ「私のために色々してくれて、プロポーズまでしてくれて。そこまでしてくれるのに、私は彼氏のことを愛してない。
でも、愛してもいない人を拘束するのって結構しんどいの。情なんてないのに、無理やり作り出すんだから。
嫌われないために、離れられないために、わがままも言わない。我慢なんて当たり前。強くいないとやってられないよ。
私は彼氏の前では、『アザミ』なの。
...いっそ、別れた方が楽なのかなとも思うんだけどね」
ケンジ「大変だな。でも、そこまでするメリットって何なわけ?」
アザミ「私の夢が叶う」
ケンジ「それだけ?」
アザミ「私にとっては大きなことなの。小さい時からずっと寂しくて、どこか孤独で。
幸せな家庭が羨ましかった。
だから、私の手で作り出そうって。やっと、やっと叶うのに......なんでこんなに辛いかな」
ケンジ「...完璧ね。んー、俺にはよくわかんねぇけど」
アザミ「ケンジはさ、なんでセフレなんて作るわけ?一人の人に決めようとは思わないの?」
ケンジ「1人に収まるなんて、俺には合わないからな」
アザミ「ふーん」
ケンジ「俺に抱かれて、それでそいつの気持ちが楽になるならって思ってる」
アザミ「どういうこと?」
ケンジ「お前もそうだったろ?俺に抱かれたいって言う女は、皆何かに苦しんでたり、悩んでたり。辛そうな姿、見てられないだろ?だから、現実逃避のサポートっていうか...な」
アザミ「現実逃避...ね」
ケンジ「心当たりあるだろ?」
アザミ「...ははっ。そうだね。考えてる、とか言いながら、なんだかんだ自分の中で答えは出てて。...多分、逃げたかっただけなんだよね。罪悪感から」
ケンジ「...サクラは、どうしたいわけ?」
アザミ「どうしたい...か」
ケンジ「1つずつでいいから。言ってみ?」
アザミ「んー...。別れたく...ない」
ケンジ「うん」
アザミ「結婚は...したい」
ケンジ「あとは?」
アザミ「...あとは......。んー、細かいことまではまだよくわかんない」
ケンジ「そうか(アザミの頭を撫でて)」
アザミ「私、どうしたらいいのかな...」
(間)
ケンジ「また、俺に抱かれに来いよ」
アザミ「...へ?」
ケンジ「サクラがしてることは世間体的にどうなのかは知らねぇけどよ。俺はいいと思うし。やりたいことやれよ。良い夢じゃねぇかよ」
アザミ「...ほんと?」
ケンジ「おう。でもな、罪悪感はしっかり持っておけよ?背負いきれないからって離婚するなんて馬鹿なことはするなよ?現実から逃げるなよ?」
アザミ「っ、でもさっき...」
ケンジ「最後まで聞けよ」
アザミ「へ?」
ケンジ「もし背負いきれなくなって、また苦しくなったら俺のとこ来いよ。俺だけはお前を逃がしてやるから」
アザミ「...いいの?」
ケンジ「お前が楽になるなら」
アザミ「...ほんと、ケンジはさ、優しすぎるよ。会いたいって言ったら来てくれるし、キスしてって言ったらするし、抱いてって言ったらほんとに抱くし...」
ケンジ「嫌だったか?」
アザミ「そんなわけないでしょ」
ケンジ「ふっ。知ってる」
アザミ「なんでそこまでしてくれるの?」
ケンジ「言ったろ?辛そうな姿見たくないって」
アザミ「そうじゃなくてさ」
ケンジ「...ん?」
アザミ「なんでそこまで思ってくれるの?」
ケンジ「...んー。秘密」
アザミ「何それ、意味わかんない」
ケンジ「お前だって言わなかったろ?」
アザミ「...何を?」
ケンジ「なんで俺なのって聞いた時」
アザミ「...いいでしょ別に」
ケンジ「あぁいいよ?だから、俺もいいよな?」
アザミ「...うん」
ケンジ「さてと、そろそろ帰る準備しないとだろ?ちゃんと服着ろよ」
アザミ「...着せて」
ケンジ「めんどくせぇ」
アザミ「甘えられた方が興奮するんでしょ?」
ケンジ「やった後にそれ言われてもなぁ」
アザミ「いいから。着せて」
ケンジ「...はぁ。はいはい」
(間)
アザミ「ねぇ、ケンジ」
ケンジ「ん?」
アザミ「ありがとね」
ケンジ「こちらこそ」
アザミ「...へ?」
ケンジ「とても気持ちよかったです」
アザミ「っ、変態!」
ケンジ「褒め言葉」
アザミ「(不貞腐れて)」
ケンジ「なぁ、サクラ」
アザミ「ん?」
ケンジ「ここから出たら、アザミに戻れよ」
アザミ「...へ?」
ケンジ「昨日の夜はなかったってこと」
アザミ「...うん」
アザミ「......ねぇ、ケンジ」
ケンジ「ん?」
アザミ「キスしてよ」
ケンジ「...ふっ。はいはい(キスして)」
(間)
~駅~
ケンジ「送らなくて大丈夫?」
アザミ「うん」
ケンジ「またな」
アザミ「うん。また...いつかね」
ケンジ「しょぼくれてんなよ。タイムラインでいつでも絡めるだろ?」
アザミ「ふふっ、それもそうね」
ケンジ「んじゃ、気をつけて帰れよ」
アザミ「はーい」
(間)
(アザミ:電話を取り出して)
アザミ「あ、もしもし?...うん。今帰り。そっちは?今から仕事?あー、そっか。じゃあ、鍵だけ閉めてってね。ポストに入れといて。...うん。...うん。はーい。了解。
...あ!待って待って。まだ切っちゃだめ。
......あのね?プロポーズのことなんだけど...。ーーー喜んで、お受けします!」
【END】
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〜あとがき〜
お久しぶりです。作者の鎖狂です。
ちょうど1ヶ月ぶりくらいですかね。
最近は1ヶ月1投稿を目標に頑張っているといいますか、ネタがありすぎて意外と1本毎のペースが早い状態です。
前置きはさておき、今回の作品はかなり闇といいますか。
浮気や不倫などって、結構色んな場面で題材にされているテーマですよね。
しかし、やはり悪いもの。やっちゃいけないもの。っていう感じの印象が強いじゃないですか。
いや、実際やっちゃいけないんですけどね。
また、最近は認知されるようになって来ましたが、『オフ会』。
こちらも、ネットは危ないからと反対する人は少なからずいますよね。
でもそんな周りからは受け入れられないことでも、きっとその人にはその人なりの幸せがあるんじゃないかなって。そこにスポットを当ててもいいんじゃないかなって。作者は思ったんですよ。
こういうハッピーエンドもアリだと思いませんか?
まぁ実際、本当にこのお話がハッピーエンドかなんて分かりませんけど。
そのひと時が幸せなら、きっとそれもある一種のハッピーエンドなんじゃないですかね。
『パンドラ』
開ければ、全て崩れ去るかもしれない。
しかしその中には、ほんのわずかな希望と幸せも含まれているのです。
さて、今回この物語で語られているのは、あくまでも『サクラの話』であり、ケンジに関してはあまり触れられていませんよね?
ケンジはアザミをどう思っているのか。
ケンジは今までどんな人生を送って来たのか。
どんな人間なのか。
そういう面を想像すると、ケンジの人間性や二人の関係性など、また変わって見える面があるのではないでしょうか?
そこは、演者様方、そしてこの作品を読んでくださっている方々にお任せするといたしましょう。
最近言いたいことが多すぎて、あとがきがまとまらず困っている作者でした。
それではまた、次回作でお会いしましょう。